カウンセリングで解決できること
学校領域
対象:学生、保護者 および 教員
- 友人関係の悩み
- 学校に行くのがしんどい
- 学習の悩み
- 家族の暴力
- 子供の非行
- 子供(親)との接し方、向き合い方
- 先生(生徒)との関係
- 将来の悩み
<事例>
母親との関係(高校一年生 女子)
高校生になったので、少しは自由になりたいのに、「母親からの干渉がしんどい、「口うるさすぎる」、「家に帰りたくない」、「母親の顔を見るだけでムカつく」という困り事の相談でした。彼女は夜遊びをするわけではなく、勉強もしっかりしている学生です。どうして母親がそこまで言う必要があるのか、家と学校では彼女の態度が異なるのか、母親からも話を聞く必要があるので、お母さまにお会いしました。母親も娘の反抗的な態度に悩まれていて、「ちょっとした会話をしたくても、すぐに反発されるので、うまく会話ができない」という悩みを抱えていました。そこで、お二人同時に来てもらい、お互い思う存分、言いたいことを言ってもらいました。私は会話の中で、娘の発言(反抗的な言葉の裏)の真意を代弁しながら、一方で、母親がどうしてその言葉を発するのか(母親の意図を確認とその言葉の背景にある「心配する心」)を聞き、それを娘がきちんと受け止めることができるように代弁しました。その結果、なんとかお互いの真意を伝え合うことはできましたが、私は常にお二人の代弁者をして存在することはできません。どうしたらお互いの言うことを曲解せずに理解することができ、信頼関係が築けるか、ということを話しあいました。なぜなら、いくら思っていても、その思いは表現しなければ相手には伝わりません。それがたとえ親子であっても。お互いが言動で示す必要があるからです。「親子だからわかり合えるはず」「言わなくてもわかるはず」という幻想を捨ててもらいました。さらに、相手に辞めてほしい行動を3つ伝え、言われた方は必ず実行するという約束をしました。次のカウンセリングでは、3つの約束事がきちんと守られたかのフィードバックと、更に新しい約束を3つ設定しました。お二人ともきちんと約束を守ることができ、2回目以降は私の干渉なしに話し合うことができるようになり、カウンセリングは2回で終了しました。
娘が高校生になったことで、母親に「今までとは異なる心配事が増えたこと」と、娘の「高校生になったから、自由にしたい」という気持ちは、お互い正反対のベクトルとなり、対立を生んでいたと言えます。お二人がベクトルの方向をお互いに理解する方向に変えようとすることで、その後の対応が自然に変わってきます。
医療領域
対象:不安や恐怖、精神面からくる身体症状に苦しんでいるご本人、ご家族
- 生きていたくない
- 家族とうまくいかない
- 配偶者から暴力を受ける
- 職場でパワハラを受けている
- 仕事が長続きしない
- 学校(仕事)に行けない状態が
続いている - 子供がひきこもっている
- 精神的な病気があっても、
社会生活をしたい - 依存症(過食、偏食、買い物)を
抑えたい
<事例>
職場での上司のパワハラに遭い、うつ状態で休職を余儀なくされた40代男性 Mさん
クリニックの担当医から、うつ症状の男性について担当依頼がありました。会社側は6か月の休暇を許可していましたが、本人の「早く復職したい」という希望を受け、薬とカウンセリングをセットに治療を行うという判断のもと、私が担当させていただくことになりました。
Mさんにとって、カウンセリングは初めての経験なので、初回は奥様とお2人でカウンセリングという形式にさせていただきました。会社での出来事をご本人から、家庭での様子を奥様からお聞きすることができました。その中でわかったのは、会社で上司にパワハラ的発言をされ、徐々に自信が持てなくなっていたようです。その上司は、誰に対してもそのような発言をしているため、社内でも嫌われているそうです。幸いなことにその上司はMさんが休職中に部署移動をすることが決まっており、もう顔を合わせる必要はありません。しかし、新しい上司とは面識がないため、パワハラ的発言をする上司がいなくなることにも解放感がもてず、又新しい上司への不安もあるようです。うつ状態になると、ほとんどの方が本来の自分を見失い、自信が持てなくなり、あらゆる事に対して不安を抱える傾向になります。
カウンセリングの目標は、復職に向けて、本来の自信を回復すること、不安や不調に打ち克つためのメンタルのパワーを蓄えることにしました。加えて、うつ状態になるに至ったMさんの性格特性(思考のクセ)を変えていくことや、この状態でなければ気づけなかったこと(メタ認知)など、Mさんの思考に選択肢を増やし、視野を拡げていく思考トレーニングなどをしました。
ご自身で考えていただくワークが多かったので、カウンセリングは2週間に1回のペースで、その間は宿題をしていただくようにしました。そして1か月後、とうとう、来週から復職…という日を迎えました。Mさんは、緊張した面持ちでした。私は、この一ヶ月でMさんの顔つきがすっかり変わっていたので「もう、大丈夫ですよ」「復職のシミュレーションもばっちりだったじゃないですか」と言っても、「でも、何があるかわかりませんから…」というのです。そこで「じゃあ、何かパワーを与えてくれるアイテムをお持ちになりますか?」と尋ねると、「お守りみたいなものですか? う~ん、近所の神社でお守りとか買った方がいいですか?」というので、「そうですね。今までMさんとお話していると、ご家族がMさんのパワーの源と見受けられましたので、家族の写真なんてどうですか?」といいました。「家族の写真は携帯の中に入っていますが、待ち受けにすればいいですか?」という問いに「上司の前で携帯を取り出してみることは難しいですよね。できれば印刷して写真としてお持ちになったらいかがですか?」と提案させていただきました。
Mさんは写真をプリントして持って行きましたが、結局写真を見る必要はなかったようです。「でも、せっかく持って行ったし、またストレスを感じる場面でも役立ちそうなので、念のために会社の引き出しに入れてあります」とおっしゃいました。
こんな風にMさんは積極的にストレス対処法をご自分で考えるようになっていました。Mさんは3回の面談で不安を克服され復職されましたが、でもまた無理をしてしまうと、メンタルパワーが弱ってきてしまうので、「少しでもしんどくなったら来てくださいね」「いつでも頼ってくれていいんですよ」という思いを残し、終了しました。
ソーシャル領域
対象:どなたでも
<事例>
友人の言動に傷つき、友人関係が辛いと話す Aさん
近年HSP(Highly Sensitive Person)という物理的および精神的感覚が「敏感すぎる」ため、生きにくい、傷つきやすい人たちの傾向が取り上げられています。学校現場にいると、程度の差はあれ、クラスに数人はこのタイプの学生がいます。また、HSPの傾向はなくても、自分のペースと周りのペースが合わなくて、人に合わせるのも、合わせてもらうのも苦痛と感じ、一人でいることを選んでいる学生もいます。すでに社会人になっても、様々な原因から、学生時代の交友関係がうまくいかなかった経験があり、人間関係に自信が持てない方たちも多くいらっしゃいます。
Aさんは「友人関係がつらい」と言いながらも、「友人と距離をおきたい」わけではなく、「友人と仲良くしたい」と思っています。だからこそ「傷つくのがこわい」のです。Aさんは人一倍「友人を大切にしたい」と思っています。でも、友人の行動で自分が「大切にしていない」と思えると(約束をドタキャンされる、既読スルーされる、相手の都合で予定を変更される)、とても傷つきます。それなのに、相手に強く文句を言えないのです。「嫌われたくない」から必要以上に気を使って、でもその気遣いに疲れてしまってしんどくなってしまう。そして、相手もきっとそんなAさんの様子から「この子、なんで何も言わないんだろう」「私に心を開いていないんだな」と思われてしまい、かえって相手を遠ざけてしまう…という悪循環になってしまいます。
キーワードは「自己開示」です。「自分の好きなこと、嫌いなこと」「されてうれしかったこと、されて嫌なこと」「自分が考えていること」などを相手に伝えて「私は○○な人」ということを相手に理解(わかって)してもらう努力のことです。
HSPの人たちはこの自己開示をとても嫌がります。それは自分のことを話して相手に否定されたり、批判されたり、ばかにされたり、傷つけられるのが嫌だからです。
この思考にはいくつかの矛盾点があります。自分のことをわかってもらえることを避けて自分以外の誰かとつきあうことなどできないからです。
A子さんの場合は、以下の①~④のことを理解してもらい、実行してもらう必要がありました。
①否定・批判などのマイナス評価が来るとは限らない。受け入れられる、同調される、プラスの評価を得られる可能性もある。
②相手がすべての選択権を持っているのではなく、Aさんにも同様に選択権はある。友達を選ぶ権利、怒る権利、友達関係を解消する権利など。
③自己開示と言っても、全部さらけだして致命傷を負う必要はない。少しずつ開示して、相手の反応を見るということをしていくこともできる。
④③の方法で、仮に傷ついたとしても、多少の擦り傷なら耐えられる。「擦り傷を負ったら、カウンセリングという手当で治るし、治しながら、簡単に傷つかないように心を強くすることもできる。そして、究極は、そんな傷ついてしまう友人関係ならば解消する」という選択権もある。
Aさんも「自分が嫌だ」と思うことがあったら、その都度自分の気持ちを相手に伝えること。その際は相手を責める口調ではなくて、主語を「私」にしたI messageにすることなど、受け入れられやすいようなアプローチを工夫しました。そして自分の気持ちを少しずつ伝えることができるようになったAさんは、少し後になって、「自分がなかなか言いたいことが言えなかった」と友人たちに伝えると、友人たちは「Aちゃんって怒らないし、何も言わないし、全然気にしない人だと思ってた。ごめんね。」と謝ってもらえたそうです。 既読スルーをされても、今までなら「無視された」「なんか変なこと言ったかな?」「嫌われたかな?」と気にしていたけど、数日待っていたら、返事が来て、取り越し苦労だった、ということが多くなりました。 友人たちの態度は以前となんら変わっていないのだと思いますが。でも、A子さんの考え方が変わってきたので、相手の反応も違って見えるようになりました。 まだまだA子さんは悩んだり落ち込んだりする時があります。でも、その時はカウンセリングに来て、自分を立て直しています。「私はカウンセリングに依存しすぎているのかもしれないけど、でも、今の私にはまだ心のメインテナンスが必要なんです」と自己分析していらっしゃいます。
車も調子よく走り続けるためには、メインテナンスが必要ですよね。セルフメインテナンスをしつつも、もし大がかりな調整が必要な時は、自分以外の人の力を借りてもいいのかもしれませんね。